【伝説の入試問題】ハート関数(2012・信州大学)

方程式と関数

今回は「2012・信州大学」の入試問題解説です。

グラフの概形を書く問題で、とても心温まる図形が浮かび上がります。

この記事を読むと

・偶関数の活用方法

・グラフの概形の書き方

・偶関数を活用した面積の求め方

・円の面積を利用した、積分計算

について理解できます。

この記事は、「わか」が執筆しています。

私「わか」(https://twitter.com/wakkachan2019)は、国立大学数学科を卒業後、数学教育に10年以上関わっています。

問題:ハート関数

問題

\(-\sqrt5≤x≤\sqrt5\) で定義される2つの関数

$$f(x)=\sqrt{|x|}+\sqrt{5-x^2}$$

$$g(x)=\sqrt{|x|}-\sqrt{5-x^2}$$

に対し、次の問いに答えよ。

(1) 関数\(f(x)\)と\(g(x)\)の増減を調べ、\(y=f(x)\)と\(y=g(x)\)のグラフの概形をかけ。

(2) 2つの曲線\(y=f(x),g=f(x)\)で囲まれた図形の面積を求めよ。

解説

(1)解答(グラフの概形)

(1)解答

$$f(x)=\sqrt{|x|}+\sqrt{5-x^2}$$

$$g(x)=\sqrt{|x|}-\sqrt{5-x^2}$$

は偶関数なので、\(0≤x≤5\) を考える 【補足1】

$$f(x)=\sqrt x+\sqrt{5-x^2}$$

$$f'(x)=\frac{1}{2\sqrt x}+\frac{-2x}{2\sqrt{5-x^2}}$$

$$=\frac{\sqrt{5-x^2}-2x\sqrt x}{\sqrt x\sqrt{5-x^2}}$$

ここで \(f'(x)=0\) とすると

$$\sqrt{5-x^2}-2x\sqrt x=0$$

$$\sqrt{5-x^2}=2x\sqrt x$$

両辺2乗して

$$5-x^2=4x^3$$

$$4x^3+x^2-5=0$$

$$(x-1)(4x^2+5x+5)=0$$

これを満たす実数解は \(x=1\)

したがって、増減表は以下の通り

\begin{array}{|c|c|c|} \hline x & 0 &\cdots&1&\cdots&\sqrt5 \\ \hline f'(x) & & +&0&-& \\ \hline f(x)&\sqrt5&\nearrow&3&\searrow&\sqrt[4]{5}\\\hline\end{array}

続いて

$$g(x)=\sqrt{x}-\sqrt{5-x^2}$$

$$g'(x)=\frac{1}{2\sqrt x}+\frac{2x}{2\sqrt{5-x^2}}$$

$$=\frac{\sqrt{5-x^2}+2x\sqrt x}{2\sqrt x\sqrt{5-x^2}}$$

\(g'(x)\) はつねに正となり、増減表は以下の通り

\begin{array}{|c|c|c|} \hline x & 0 &\cdots&\sqrt5 \\ \hline g'(x) & & +& \\ \hline g(x)&-\sqrt5&\nearrow&\sqrt[4]{5}\\\hline\end{array}

\(f(x),g(x)\) が偶関数で、y軸対称であることに注意するとグラフは、以下の通り

(2)解答(グラフの面積)

(2)解答

求める面積Sは

$$S=2\int_{0}^{\sqrt5}(\sqrt x+\sqrt{5-x^2})-(\sqrt x-\sqrt{5-x^2})dx$$

$$=4\int_{0}^{\sqrt5}\sqrt{5-x^2}dx$$

ここで\(\displaystyle{\int_{0}^{\sqrt5}\sqrt{5-x^2}dx}\) は、半径\(\sqrt5\)の円を4分の1にした面積と等しい 【補足2】

$$S=4\cdot\frac{1}{4}\cdot\pi\cdot(\sqrt5)^2=5\pi$$

【補足1】:偶関数と奇関数

今回の問題は、偶関数であることを利用しています。

偶関数

偶関数・・・\(f(x)=f(-x)\) を満たす関数(「x」を「-x」に変えると、元の式になる)

\(y=f(x)\) のグラフは、y軸に対して対称

奇関数

奇関数・・・\(f(x)=-f(-x)\)を満たす関数(「x」を「-x」に変えると、元の式の「-1倍」になる)

\(y=f(x)\) のグラフは、原点に対して対称

偶関数は、y軸に関して対称であることを利用し、定義域が正のときのみ考えて、グラフの概形、面積を求めています。

【補足2】:積分を円の面積に置き換える

円の面積に置き換える

\(\int_{0}^{a}\sqrt{a^2-x^2}dx\) は、半径aの円の面積の一部ととらえて求める

\(y=\sqrt{a^2-x^2}\) とおくと、両辺2乗して

$$y^2=a^2-x^2 (y>0)$$

$$x^2+y^2=a^2 (y>0)$$

つまり、円の上半分である。

積分範囲が 0〜a なので、円の4分の1

まとめ:ハート関数

今回のまとめは以下の通り

・偶関数を利用し、x>0 にしぼって考える

・増減表を作ると、「ハート型のグラフ」をえがくことが出来る

・面積も偶関数を利用する

・積分計算で、「円の面積」に置き換えて考えると計算が楽

以上で、「ハート関数」をえがく信州大学の過去問解説を終わります。

少しでも参考になれば幸いです。それではまた。

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