今回は、極限の良問を紹介します。
様々な重要ポイントが含まれているので、確認してみましょう。
問題 \(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \frac{1}{n}\sqrt[n]{\frac{4n!}{3n!}}\) を求めよ。
着眼点
- \(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \frac{1}{n}\)の形があるので区分求積を疑う
- n乗根で階乗がついているときは、\(\log\)をとる
解説
まずは、根号の中身を整理しよう。
$$A_n=\frac{1}{n}\sqrt[n]{\frac{4n!}{3n!}}$$
とおく。
$$A_n=\frac{1}{n}\sqrt[n]{\frac{4n(4n-1)(4n-2)(4n-3)\cdots(3n+1)3n(3n-1)\cdots3\cdot2\cdot1}{3n(3n-1)(3n-2)(3n-3)\cdots3\cdot2\cdot1}}$$
どかっと約分できます
$$A_n=\frac{1}{n}\sqrt[n]{4n(4n-1)(4n-2)(4n-3)\cdots(3n+1)}$$
\(\frac{1}{n}\)を根号の中に入れて
$$A_n=\sqrt[n]{\frac{4n(4n-1)(4n-2)(4n-3)\cdots(3n+1)}{n\cdot{n}\cdot{n}\cdot{n}\cdots{n}}}$$
分子の順番を逆にして
$$A_n=\sqrt[n]{\frac{(3n+1)(3n+2)\cdots(3n+n-1)(3n+n)}{n\cdot{n}\cdot{n}\cdot{n}\cdots{n}}}$$
分母と分子はどちらもn個の積である。変形すると
$$A_n=\sqrt[n]{(3+\frac{1}{n})(3+\frac{2}{n})(3+\frac{3}{n})\cdots(3+\frac{n-1}{n})(3+\frac{n}{n})}$$
区分求積の形に近づいてきました。
しかし、積の形ではうまくいきません。
なんとか、和の形にしたところ。
ここで\(log\)をとる事がポイントです。
両辺logをとって
$$\log{A_n}=\log{\sqrt[n]{(3+\frac{1}{n})(3+\frac{2}{n})(3+\frac{3}{n})\cdots(3+\frac{n-1}{n})(3+\frac{n}{n})}}$$
\(log\)の性質を利用して\(\frac{1}{n}\)を前に出します
$$\log{A_n}=\frac{1}{n}\log{(3+\frac{1}{n})(3+\frac{2}{n})(3+\frac{3}{n})\cdots(3+\frac{n-1}{n})(3+\frac{n}{n})}$$
また\(log\)の性質を利用して和の形で表します。
$$\log{A_n}=\frac{1}{n}\{\log{(3+\frac{1}{n})}+\log{(3+\frac{2}{n})}+\cdots+\log{(3+\frac{n-1}{n})}+\log{(3+\frac{n}{n})}\}$$
$$\log{A_n}=\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n} \log{(3+\frac{k}{n})}$$
区分求積が使える形になりましたね。
両辺極限をとって、区分求積を利用すると
$$\lim_{n\to\infty}\log{A_n}=\int_{0}^{1} \log{(3+x)}dx$$
積分計算を進めます。
$$\lim_{n\to\infty}\log{A_n}=\left[(3+x)\log{(3+x)}-x\right]_0^1$$
$$\lim_{n\to\infty}log{A_n}=4\log{4}-1-3\log{3}$$
$$\lim_{n\to\infty}\log{A_n}=4\log{4}-1-3\log{3}$$
logをとったので、最後に外さなくてはなりません。
右辺をlogの形に変形しましょう。
右辺を変形して
$$\lim_{n\to\infty}\log{A_n}=\log{4^4}-\log{e}-\log{3^3}$$
$$\lim_{n\to\infty}\log{A_n}=\log{\frac{256}{27e}}$$
したがって
$$\lim_{n\to\infty}A_n=\frac{256}{27e}$$
答えに辿り着きました。なかなか手強い相手でしたね。
ポイントをまとめて重要事項を確認しましょう。
まとめ
ポイントは以下の5点です。
いずれも重要な考え方です。問題を通じて重要項目を身につけて下さい。
- 分数で表された階乗の約分
- 分母、分子がn個の積になっていて、式を整理する
- 区分求積を見通して、logをとる
- 積分の形に持ち込み、正確に計算する
- logを外せる形に持ち込む
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