今回は、「2005・数学オリンピック」の整数問題を解説します。
数学オリンピックと聞くと、難題だらけの異次元の世界に思えます、、、。
しかし、実は「よく考えられた良問」がたくさんあります。
今回の問題も、思考力を鍛えられる面白い問題ですので挑戦してみてください。
この記事を読むと
- 解放が思い浮かばないときのに何をすればよいか
- 2005・数学オリンピック整数問題のスッキリした解答
- 2005・数学オリンピック整数問題の実験と思考の過程
- フェルマーの小定理の使い所
- 合同式の使い所
が理解できます。
この記事は「わか」が執筆しています。
私「わか」(https://twitter.com/wakkachan2019)は、国立大学数学科を卒業後、数学教育に10年以上関わっています。
問題:2005・数学オリンピック
nを自然数とする。このとき数列
$$a_n=2^n+3^n+6^n-1$$
の全ての項と互いに素な自然数を全て求めよ。
(2005・数学オリンピック)
数学オリンピックの問題。難しそうですね、、、。
解けると、スッキリしますので、ぜひ挑戦してみてください。
解答:2005・数学オリンピック
まずは、解答から確認します。
$$a_n=2^n+3^n+6^n-1$$
pを5以上の素数とする
$$a_{p-2}=2^{p-2}+3^{p-2}+6^{p-2}-1$$
両辺6倍して
$$6a_{p-2}=3\cdot2^{p-1}+2\cdot3^{p-1}+6^{p-1}-6$$
ここで mod p を考えて
$$6a_{p-2}\equiv 3\cdot1+2\cdot1+1-6\equiv0\pmod{p}$$
\(6a_{p-2}\) は \(p\) で割り切れる
6とpは互いに素なので
\(a_{p-2}\) は \(p\) で割り切れる
5以上の素数で割り切れる \(a_{n}\) は存在する
また、4以下の素数 2 , 3 で割り切れる \(a_n\) が存在するか確認する
\(a_1=10\) は 2 で割り切れる
\(a_2=48\) は 3 で割り切れる
以上より、どの素数に対しても、割り切れる \(a_n\) は存在する
したがって、全ての \(a_n\) と互いに素な整数は1のみとなる
実際は、いきなりこの解答が思い浮かんだわけではありません。
具体例を考えて、実験を繰り返しています。
実験と思考
今回は、実際に問題を解いていく際の途中の思考も解説していきたいと思います。
実験と思考1:素数を考えればよい
具体的な数字を代入して実験する
解答が思い浮かばない問題は、まず実験をします。見ていきましょう。
$$a_n=2^n+3^n+6^n-1$$
$$a_1=2+3+6-1=10$$
$$a_2=4+9+36-1=48$$
$$a_3=8+27+216-1=250$$
$$a_4=16+81+1296-1=1392$$
2、3などで割り切れるので、2、3とは「互いに素ではない」とわかる。
2で割り切れるとき、2の倍数(4、6、8、・・・)は「互いに素ではない」
3で割り切れるとき、3の倍数(6、9、12、・・・)は「互いに素ではない」などから
素数が割り切れるかどうか
に注目して考えればよいことに気づく
現状、素数2、3、5で割り切れている
実験と思考2:7で割り切れるか→「どの素数に対しても割り切れる\(a_n\)がある」と予想
素数を小さい順にチェックしていきます。次の素数は7です。
\(a_1\)〜\(a_4\)の中に7で割り切れるものはないので「7」が解の候補ではと疑う
\(a_5\) も試す
$$a_5=32+243+6^5-1$$
計算が大変になってきたので、合同式(mod)を使う
$$a_5\equiv(-3)+(-2)+(-1)^5-1\equiv-7\equiv0\pmod7$$
7で割り切れる。この辺りで
どの素数に対しても割り切れてしまう\(a_n\) があるのではないか
と予想する。
実験と思考3:11で割り切れるか→「\(a_{p-2}\) はpで割り切れる」を示す方針
次の素数は11です。
11で割り切れる\(a_n\)を見つけたいが、今までの実験では割り切れるものはない。
\(a_5\) が 7で割り切れたことから\(a_9\)が11で割り切れるのではと思う【いろいろ試しつつたどり着いた】
$$a_9=2^9+3^9+6^9-1$$
$$\equiv32\cdot16+243\cdot81+6\cdot9^2-1\pmod{11}$$
$$\equiv(-1)\cdot 5+1\cdot4+6\cdot(-2)^2-1\pmod{11}$$
$$\equiv-5+4+24-1\equiv-5+4+2-1\equiv0\pmod{11})$$
11で割り切れた。この段階で
素数pに対して、\(a_{p-2}\) が \(p\) で割り切れる
を示せればよいと考える。
予想通り、11で割り切れると嬉しいですね!
実験と思考4:フェルマーの小定理を使いたい→両辺6倍
素数pに対して
$$a_{p-2}=2^{p-2}+3^{p-2}+6^{p-2}-1\equiv0\pmod{p}$$
を示したい。ここで
フェルマーの小定理 p:素数
$$a^{p-1}\equiv1\pmod{p}$$
が思い浮かぶが、指数部分がずれているので、そのままでは使えない。
フェルマーの小定理が使えるように
両辺6倍
すればよい
$$6a_{p-2}=3\cdot2^{p-1}+2\cdot3^{p-1}+6^{p-1}-6$$
$$\equiv3\cdot1+2\cdot1+1-6\equiv0\pmod{p}$$
示せました。
6が2や3で割り切れてしまうので、2と3は場合分けして考えればよい。
両辺6倍するはなかなか思いつけません。
気づくと、スッと視界が開けます!
以上の実験と思考を通して、前述したような「解答」を作れるというわけです。
補足:合同式、フェルマーの小定理
今回、合同式(mod)を使っています。以下を参考にしてください。
また、フェルマーの小定理も解説していますので、参考にしてください。
YouTube「日常でんがん」チャンネルで出題
今回の問題は、「日常でんがん」チャンネルで、ヨビノリたくみさんドッキリ企画で出題されていました。とても面白い内容なのでぜひご覧ください。
解説を読んでから、見るとより楽しめます。
まとめ:2005・数学オリンピック
「2005・数学オリンピック」の整数問題の解説まとめは以下の通り
- 解法が思いつかない問題は、具体的な数字を代入して実験する
- 割った余りを考えるときは、合同式を利用が便利
- 素数で割った時を考えているので、フェルマーの小定理の利用を考える
難しい問題でしたが、じっくり考えると理解できるとても楽しい問題でした。
ぜひ味わってみてください。
少しでもみなさんの参考になれば幸いです。それではまた。
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