今回は、「整数問題(2022・東工大)」について解説しました。
この記事を読むと
- 整数問題(2022・東工大)の解法
- 「対称式」や「最大公約数」がテーマの問題の1つのアプローチ
- 背理法を利用を利用した解法
- 対称式が基本対称式で表されることの利用方法
について理解するとができます。
この記事は「わか」が執筆しています。
私「わか」(https://twitter.com/wakkachan2019)は、国立大学数学科を卒業後、数学教育に10年以上関わっています。
問題:整数問題(2022・東工大)
3つの正の整数 \(a,b,c\) の最大公約数が1であるとき、次の問に答えよ。
(1) 「\(a+b+c\)」 , 「\(ab+bc+ca\)」 , 「\(abc\)」 の最大公約数が1であることを示せ。
(2) 「\(a+b+c\)」 , 「\(a^2+b^2+c^3\)」 , 「\(a^3+b^3+c^3\)」 の最大公約数となるような正の整数を全て求めよ。
解説:整数問題(2022・東工大)
(1)解説:背理法利用
背理法を使って証明する
「\(a+b+c\)」 , 「\(ab+bc+ca\)」 , 「\(abc\)」 の最大公約数が1でない
と仮定する
つまり、pを素数として
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} a+b+c&=&pl&・・・① \\ ab+bc+ca&=&pm&・・・② \\abc&=&pn&・・・③ \end{array} \right. \end{eqnarray}
と表すことができる
③より
$$\underbrace{abc}_{\color{red}{pの倍数}}=pn$$
\(a,b,c\) の少なくとも1つは、pの倍数となる
aをpの倍数とする(対称性から一般性は保たれる)
②より
$$\underbrace{ab}_{pの倍数}+\underbrace{bc}_{\color{red}{pの倍数}}+\underbrace{ca}_{pの倍数}=pm$$
\(b,c\) の少なくとも一方は、pの倍数となる
bをpの倍数とすると
①より
$$\underbrace{a}_{pの倍数}+\underbrace{b}_{pの倍数}+\underbrace{c}_{\color{red}{pの倍数}}=pl$$
以上より、\(a,b,c\)はいずれもpの倍数となる
これは、「\(a,b,c\)の最大公約数が1である」ことに矛盾する
したがって、「\(a+b+c\)」 , 「\(ab+bc+ca\)」 , 「\(abc\)」 の最大公約数は1
(証明終)
(2)解説:対称式は基本対称式で表すことができる
「\(a+b+c\)」 , 「\(a^2+b^2+c^3\)」 , 「\(a^3+b^3+c^3\)」 をそれぞれ
基本対称式「\(X=a+b+c\)」 , 「\(Y=ab+bc+ca\)」 , 「\(Z=abc\)」 を使って表す
$$\color{blue}{a+b+c}=\color{blue}{X}$$
$$\color{blue}{a^2+b^2+c^2}=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca)=\color{blue}{X^2-2Y}$$
$$\color{blue}{a^3+b^3+c^3}=(a+b+c)(a^2+b^2+c^3-ab-bc-ca)+3abc$$
$$=X(X^2-2Y-Y)+3Z=\color{blue}{X^3-3XY+3Z}$$
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} a+b+c&=&X&・・・① \\ a^2+b^2+c^2&=&X^2-2Y&・・・② \\a^3+b^3+c^3&=&X^3-3XY+3Z&・・・③ \end{array} \right. \end{eqnarray}
①②より「\(a+b+c\)」と「\(a^2+b^2+c^2\)」の最大公約数は「X」と「2Y」の最大公約数
①③より「\(a+b+c\)」と「\(a^3+b^3+c^3\)」の最大公約数は「X」と「3Z」の最大公約数
つまり
「\(a+b+c\)」と「\(a^2+b^2+c^2\)」と「\(a^3+b^3+c^3\)」の最大公約数は
「X」と「2Y」と「3Z」の最大公約数
ここで「X」「2Y」「3Z」の最大公約数をdとすると
dは「6X」「6Y」「6Z」も割り切る
(1)より「X」「Y」「Z」の最大公約数は1なので
dの候補は6の約数の1、2、3、6のみとなる
最後に1、2、3、6が実際に最大公約数になるか調べる
\begin{array}{|c|c|c|} \hline a & b & c &a+b+c&a^2+b^2+c^2&a^3+b^3+c^3&最大公約数\\ \hline 1 & 1 & 1&3&3&3&3\\\hline1&1&2&4&6&10&2 \\\hline1&1&3&5&11&29&1\\\hline1&1&4&6&18&66&6\\ \hline \end{array}
確かに1、2、3、6が最大公約数となっていることから
「\(a+b+c\)」 , 「\(a^2+b^2+c^3\)」 , 「\(a^3+b^3+c^3\)」 の最大公約数
となるような正の整数は1、2、3、6
補足
対称式は基本対称式で表すことができる
対称式とは「文字を入れ替えても同じになる式」のことを言います。
対称式の大切な定理として
対称式は、必ず基本対称式を使って表すことができる
というものがあります。
今回は、
\(x,y,z\)の対称式は、基本対称式\(x+y+z,xy+yz+zx,xyz\)で表すことができる
を利用しています。
3次の有名な因数分解
今回以下の有名な因数分解を利用しています。
因数分解の公式
$$x^3+x^3+x^3-3xyz=(x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx)$$
最大公約数がテーマの整数問題
最大公約数がテーマの入試問題はよく出題されます。
以下で解説しているのでぜひご覧ください。
まとめ:整数問題(2022・東工大)
整数問題(2022・東工大)の解説まとめは以下の通りです。
- 整数問題(2022・東工大)は「対称式」や「最大公約数」がテーマ
- 背理法を利用・・・最大公約数が「1」でないことを仮定して矛盾を導く
- 対称式は基本対称式で表すことができることを利用して変形する
- 最大公約数の候補を絞り込み、最終的に実際にその候補の整数が最大公約数となることで求める
整数問題(2022・東工大)の解説は以上で終わります。
少しでもみなさんの参考になれば幸いです。それではまた。
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