ルート2は無理数っていうのは習ったけど、どうやって証明していいか、、、
という方に向けてルート2の証明方法について解説していきます。
- ルート2とは
- 有理数、無理数とは
- 背理法とは
- 3通りの証明方法
- 証明方法の前提事項
ルート2とは
まず、ルート2の確認から。
\(\sqrt2\)は2乗すると2になる正の数
\(\sqrt3\)は2乗すると3になる正の数
\(\sqrt4\)は2乗すると4になる正の数(つまり2のこと)
です。
有理数、無理数とは
有理数と無理数の違いは、
有理数・・・分数で表せる
無理数・・・分数で表せない
です。この違いについてはこの記事で、有限小数、循環小数、循環しない無限に続く小数などの違いから説明しています。
今回は、無理数であることを証明するので、分数で表せないこと示さなくてはなりません。
しかし、分数で表せないことというのは直接証明するのは、議論しにくいので、背理法という証明方法を使います。
背理法とは
背理法とは、
「〇〇でない」ことを仮定し、矛盾を導くことで、「〇〇である」ことを示す証明方法
今回は、この背理法を使って、「無理数である(分数で表せない)」ことを直接示すのは難しいので、「無理数でない(有理数である:分数で表せる)」ことを仮定して、矛盾を導くことによって「無理数である」ことを導くという方針です。
証明1(互いに素と矛盾)
一番有名な証明方法です。
\(\sqrt2\)が有理数であると仮定する
\(\displaystyle{\sqrt2=\frac{q}{p}}\) ここで、p,qは互いに素な整数
両辺2乗して
$$2=\frac{q^2}{p^2}$$
$$2p^2=q^2$$
\(q^2\)は2の倍数、したがって\(q\)は2の倍数 ※補足1
\(q=2k\)とおく(kは整数)
$$2p^2=4k^2$$
$$p^2=2k^2$$
p,kは互いに素な整数なので、
\(p^2\)は2の倍数、したがって\(p\)は2の倍数 ※補足1
ここで、p,qはともに2の倍数であるが、
これは、p,qが互いに素な整数であることと矛盾する。
したがって、
\(\sqrt2\)は無理数
(証明終)
補足1
\(p^2\)が2の倍数ならば、\(p\)は2の倍数の証明は省略していますので、補足します。
すぐに証明できるので、証明しましょう。
対偶を示すのが簡単です。
\(p\)が2の倍数でないならば、\(p^2\)が2の倍数でないこと
を示します。
\(p\)が2の倍数ではない整数とすると、
\(p=2k+1\) (kは整数)と表せる
このとき
$$p^2=(2k+1)^2$$
$$=4k^2+4k+1$$
$$=2(2k^2+2k)+1$$
よって\(p^2\)は2の倍数ではない整数
対偶が示せたので、
\(p^2\)が2の倍数ならば、\(p\)は2の倍数
証明2(素因数の個数の矛盾)
\(\sqrt2\)が有理数であると仮定する
\(\displaystyle{\sqrt2=\frac{q}{p}}\) ここで、p,qは互いに素な整数
両辺2乗して
$$2=\frac{q^2}{p^2}$$
$$2p^2=q^2$$
ここで、
左辺の2の素因数の個数を考えると、奇数個
右辺の2の素因数の個数を考えると、偶数個
となる。
これは、素因数分解は1通りでしか表されないので、等式の左辺と右辺で素因数の個数が一致することと矛盾する。
したがって、
\(\sqrt2\)は無理数
(証明終)
証明3(2乗して2になる整数はないことと矛盾)
\(\sqrt2\)が有理数であると仮定する
\(\displaystyle{\sqrt2=\frac{q}{p}}\) ここで、p,qは互いに素な整数
両辺2乗して
$$2=\frac{q^2}{p^2}$$
$$2p=\frac{q^2}{p}$$
左辺の2pは整数なので、右辺の\(\frac{q^2}{p}\) も整数
「pとqは互いに素」なので
\(\frac{q^2}{p}\) が整数となるのは、p=1 のとき
よって \(q^2=2\)
ここで、\(1^2=1,2^2=4\) より
「2乗して2になる整数q」は存在しないので、矛盾が生じる
したがって、\(\sqrt2\)は無理数
今回の証明は、ルート2が実数であることを前提としている
「この背理法を用いた証明は、ちゃんとした証明ではない」
という話題があります。
「数学ボーイz」さんという方の、とても面白い動画です。
では、今回の証明の「ちゃんとしていない」を整理します。
背理法を使って
ルート2を有理数と仮定すると矛盾が生じるのでルート2は有理数でない
ここまでは、正しい議論です。しかし、
有理数でないからといって無理数とは限らない
という話です。
例えば、虚数iは有理数でないし、無理数でもありません。
この証明には、前提があります。それは、
ルート2が実数である
ということです。
ルート2が実数ならば、「有理数でなければ、無理数である」は成り立ちます。
今回の証明は、ルート2が実数であることを前提した証明だったわけです。
高校数学の範囲では、ルート2が実数であることを前提として考えることが一般的なので、問題はありません。
では、ルート2は実数というのはどのように示すのでしょうか、、、これについてはまた次回にしましょう。
ルート2をめぐったピタゴラスの物語については以下を参考にしてください。
まとめ
- ルート2とは、2乗すると2になる正の実数
- 有理数と無理数の違いは、分数で表せるかどうか
- 背理法とは「〇〇ではない」を仮定し、矛盾を導き、「〇〇である」を示す証明方法
- 背理法を利用した(互いに素と矛盾を導く)と(素因数の個数の矛盾を導く)と(2乗して2になる整数がないという矛盾を導く)3通りの証明方法
- ルート2が実数であることを前提とした証明方法である
以上ルート2が無理数であることの証明解説でした。
少しでも勉強の役に立てば幸いです。
コメント