今回は伝説の入試問題シリーズです。
京都大学にとてもユニークな問題が出題されました。
ざっくり言うと「あなたの好きな数を一つ決めて、その値が得点となる」と言うものです。

ロマンあふれる問題ですね。
それでは、早速問題を詳しく見ていきましょう。
問題(1995・京都大学 後期)
自然数nの関数\(f(n),g(n)\)を
\(f(n)=n\)を7で割ったあまり
\(\displaystyle{g(n)=3f(\sum_{k=1}^{7}k^n)}\)
によって定める
(1)全ての自然数nに対して\(f(n^7)=f(n)\)を示せ
(2)あなたの好きな自然数nを一つ決めて\(g(n)\)を求めよ
その\(g(n)\)の値をこの設問におけるあなたの得点とする
本当に「好きな自然数を一つ決めて、その値によって自分の得点が決まる」ようですね。
しかし、よく見ると好きな自然数nを決めて、それを代入した\(g(n)\)が得点となるようです。きっとここに出題者の意図が隠されているのでしょう。
それでは解説です。
(1)解説
方針
少し大変ですが、
① nを7で割った時のあまりの7パターンで場合わけ
②「\(n^7\)」2項定理を使って展開して、7で割ったあまりが等しいことを示す
解法1
(1)「\(n\)を7で割ったあまり」と「\(n^7\)を7で割ったあまり」が等しいことを示せばよい
整数kに対して
① \(n=7k\)のとき
nを7で割った余りは0
$$n^7=(7k)^7$$
\(n^7\)を7で割った余りは0
② \(n=7k+1\)のとき
nを7で割った余りは1
$$n^7=(7k+1)^7$$
$$=\underbrace{(7k)^7+_7C_1\cdot(7k)^6\cdot1+\cdots+_7C_6\cdot(7k)^1\cdot1^6}_{7の倍数}+1^7$$
$$=\underbrace{(7k)^7+_7C_1\cdot(7k)^6\cdot1+\cdots+_7C_6\cdot(7k)^1\cdot1^6}_{7の倍数}+1$$
\(n^7\)を7で割った余りは1
③ \(n=7k-1\)のとき
nを7で割った余りは−1
$$n^7=(7k-1)^7$$
$$=\underbrace{(7k)^7+_7C_1\cdot(7k)^6\cdot(-1)+\cdots+_7C_6\cdot(7k)^1\cdot(-1)^6}_{7の倍数}+(-1)^7$$
$$=\underbrace{(7k)^7+_7C_1\cdot(7k)^6\cdot(-1)+\cdots+_7C_6\cdot(7k)^1\cdot(-1)^6}_{7の倍数}-1$$
\(n^7\)を7で割った余りは−1
④ \(n=7k+2\)のとき
nを2で割った余りは2
$$n^7=(7k+2)^7$$
$$=\underbrace{(7k)^7+_7C_1\cdot(7k)^6\cdot2+\cdots+_7C_6\cdot(7k)^1\cdot2^6}_{7の倍数}+\underbrace{2^7}_{128}$$
$$=\underbrace{(7k)^7+_7C_1\cdot(7k)^6\cdot2+\cdots+_7C_6\cdot(7k)^1\cdot2^6+7\times18}_{7の倍数}+2$$
\(n^7\)を2で割った余りは2
⑤ \(n=7k-2\)のとき
nを7で割った余りは−2
$$n^7=(7k-2)^7$$
$$=\underbrace{(7k)^7+_7C_1\cdot(7k)^6\cdot(-2)+\cdots+_7C_6\cdot(7k)^1\cdot(-2)^6}_{7の倍数}+\underbrace{(-2)^7}_{-128}$$
$$=\underbrace{(7k)^7+_7C_1\cdot(7k)^6\cdot(-2)+\cdots+_7C_6\cdot(7k)^1\cdot(-2)^6-7\times18}_{7の倍数}-2$$
\(n^7\)を7で割った余りは−2
⑥ \(n=7k+3\)のとき
これを7で割った余りは3
$$n^7=(7k+3)^7$$
$$=\underbrace{(7k)^7+_7C_1\cdot(7k)^6\cdot3+\cdots+_7C_6\cdot(7k)^1\cdot3^6}_{7の倍数}+\underbrace{3^7}_{2187}$$
$$=\underbrace{(7k)^7+_7C_1\cdot(7k)^6\cdot3+\cdots+_7C_6\cdot(7k)^1\cdot3^6+7\times312}_{7の倍数}+3$$
\(n^7\)を7で割った余りは3
⑦ \(n=7k-3\)のとき
nを7で割った余りは−3
$$n^7=(7k-3)^7$$
$$=\underbrace{(7k)^7+_7C_1\cdot(7k)^6\cdot(-3)+\cdots+_7C_6\cdot(7k)^1\cdot(-3)^6}_{7の倍数}+\underbrace{(-3)^7}_{-2187}$$
$$=\underbrace{(7k)^7+_7C_1\cdot(7k)^6\cdot(-3)+\cdots+_7C_6\cdot(7k)^1\cdot(-3)^6-7\times312}_{7の倍数}-3$$
\(n^7\)を7で割った余りは−3
①〜⑦より
全ての自然数nに対して、\(f(n^7)=f(n)\)
長くなってしまいましたが、2項定理を使って地道にいくと以上のようになります。
他にもmodの計算を使って解く方法もあります。
解法2
「\(n\)を7で割ったあまり」と「\(n^7\)を7で割ったあまり」が等しいことを示すのは
$$n^7-n\equiv0\pmod7$$
を示せばよい。
\(n\equiv0\)のとき$$n^7-n\equiv0\pmod7$$
\(n\equiv\pm1\)のとき$$n^7-n\equiv0\pmod7$$
\(n\equiv\pm2\)のとき$$n^7-n\equiv\pm126\equiv0\pmod7$$
\(n\equiv\pm3\)のとき$$n^7-n\equiv\pm2184\equiv0\pmod7$$
したがって
$$n^7-n\equiv0\pmod7$$
また因数分解を利用して解く方法もあります。
解法3
「\(n\)を7で割ったあまり」と「\(n^7\)を7で割ったあまり」が等しいことを示すのは
\(n^7-n\)を7で割ったあまりが0であることを示せばよい。
$$n^7-n=n(n^6-1)$$
$$=n(n^3+1)(n^3-1)$$
$$=n(n+1)(n-1)(n^2+n+1)(n^2-n+1)$$
$$n,n+1,n-1,n^2+n+1,n^2-n+1$$
のいずれかが7の倍数になればよい
kを整数とするとき
n=7kのとき nは7の倍数
n=7k+1のとき n-1は7の倍数
n=7k-1のとき n+1は7の倍数
n=7k+2のとき \(n^2+n+1\)は7の倍数
n=7k-2のとき \(n^2-n+1\)は7の倍数
n=7k+3のとき \(n^2-n+1\)は7の倍数
n=7k-3のとき \(n^2+n+1\)は7の倍数
したがって、\(n^7-n\)を7で割ったあまりが0である

いずれの解法も、nを7で割った時のあまりで分類しています。
ちなみにこの問題はフェルマーの小定理のp=7のときです。
フェルマーの小定理
p:素数、a:自然数としたとき
$$a^p\equiv a\pmod p$$
以下pを法とする
m,nを自然数としたとき
$$(m+n)^p$$
$$=m^p+\underbrace{_pC_1\cdot m^{p-1}\cdot n+_pC_2\cdot m^{p-2}\cdot n^2 +\cdots +_pC_{p-2}\cdot m^2\cdot n^{p-2}+_pC_{p-1}\cdot m\cdot n^{p-1}}_{pの倍数}+n^p$$
$$\equiv m^p+n^p$$
であるので、
$$n^p=(1+n-1)^p$$
$$\equiv1^p+(n-1)^p$$
$$=1^p+(1+n-2)^p$$
$$\equiv1^p+1^p+(n-2)^p$$
$$\equiv\underbrace{1^p+1^p+\cdots1^p}_{n個}=n$$

「フェルマーの小定理」って言うと「いかつく」聞こえますが、意外と身近な問題で使われています。
(2)解法
続いて(2)です。
この問題が「伝説の問題」と言われる所以です。
自分で「好きな数」を決めてそれによって「得点」が決まるという形式になっています。
当然最大の点数をもらうために数字を決めたいと思います。
方針
n=1〜6を代入して具体的に計算する
n=7以上は(1)より考える必要はない
解法
$$g(n)=3f(\sum_{k=1}^{7}k^n)$$
$$=3f(1^n+2^n+3^n+4^n+5^n+6^n+7^n)$$
\(n=1,2,3,4,5,6\)を代入する
n=1のとき
$$g(1)=3f(1^1+2^1+3^1+4^1+5^1+6^1+7^1)$$
$$=3f(1+2+3+4+5+6+7)$$
$$=3f(28)=3\times0=0$$
n=2のとき
$$g(2)=3f(1^2+2^2+3^2+4^2+5^2+6^2+7^2)$$
$$=3f(1+4+9+16+25+36+49)$$
$$=3f(140)=3\times0=0$$
n=3のとき
$$g(3)=3f(1^3+2^3+3^3+4^3+5^3+6^3+7^3)$$
$$=3f(1+8+27+64+125+216+343)$$
$$=3f(784)=3\times0=0$$
n=4のとき
$$g(4)=3f(1^4+2^4+3^4+4^4+5^4+6^4+7^4)$$
$$=3f(1+16+81+256+625+1296+2401)$$
$$=3f(4676)=3\times0=0$$
n=5のとき
$$g(5)=3f(1^5+2^5+3^5+4^5+5^5+6^5+7^5)$$
$$=3f(1+32+243+1024+3125+7776+16807)$$
$$=3f(29008)=3\times0=0$$
n=6のとき
$$g(6)=3f(1^6+2^6+3^6+4^6+5^6+6^6+7^6)$$
$$=3f(1+64+729+4096+15625+46656+117649)$$
$$=3f(184820)=3\times6=18$$
f(n)の最大は6であるので
n=6のとき最大となる
好きな数字を「6」と決めて
\(g(6)=18\)
この値「18」が得点となる
7を法としたそれぞれの値
7を法としたときのそれぞれの値を表にまとめると
\begin{array}{|c|c|c|} \hline & & k=1 & k=2 &k=3&k=4&k=5&k=6&k=7&合計\\\hline n=1のとき&k^1&1&2&3&4&5&6&0&0\\\hline n=2のとき&k^2&1&4&2&2&4&1&0&0\\\hline n=3のとき&k^3&1&1&6&6&6&1&0&0\\\hline n=4のとき&k^4&1&2&4&4&2&1&0&0\\\hline n=5のとき&k^5&1&4&5&2&3&6&0&0\\\hline n=6のとき&k^6&1&1&1&1&1&1&0&6\\\hline \end{array}
6の倍数のときのみ得点が「18点」入り、それ以外は「0点」となると言う結論でした。
自分で点数を決められるようで、n=6に辿り着かなければ「0点」と言うなかなか厳しい問題ですね。

さすが京大。面白い問題ですね!
まとめ
・「あなたの好きな自然数nを一つ決めて\(g(n)\)を求めよ
その\(g(n)\)の値をこの設問におけるあなたの得点とする」と言う自分で点数を決める問題
・(1)は\(n^7-n\)が7の倍数を示す
・(1)はフェルマーの小定理のp=7の場合
・(2)はnに数値を代入して、考えていけばいいよい
・(2)は好きな数字に「6の倍数」を選べば18点を獲得し、「それ以外」を選ぶと0点
以上「伝説の入試問題」と言われる1995年の京都大学の入試問題でした。
「あなたの好きな自然数nを一つ決めて、その値をこの設問におけるあなたの得点とする」と言う何ともロマンのある問題でした。
計算していくとn=1~5は「0点」、n=6で初めて「18点」がもらえるというなかなか厳しい問題設定でした。
面白いですね。
「伝説の入試問題シリーズ」他にも紹介していますので、ぜひご覧ください
以上です。今後も伝説の入試問題シリーズ続けていきたいと思いますのでよろしくお願いします。それではまた。
コメント