【伝説の入試問題】フェルマーの最終定理(1998・信州大学)

整数

今回は、「伝説の入試問題シリーズ」です。

わか
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この記事は、「わか」が執筆しています。

私「わか」(https://twitter.com/wakkachan2019)は、国立大学数学科を卒業後、数学教育に10年以上関わっています。

「伝説の入試問題シリーズ」は、数学の入試問題の中から、伝説と言われている問題をピックアップして、紹介していくものです。

今までに以下のような紹介をしています。

今回の伝説の入試問題は

「1998年信州大学の問題」

「題材が、フェルマーの最終定理」

「整数の証明問題」

となっています。

それではみていきましょう。

問題:フェルマーの最終定理(1998・信州大学)

まずは問題です。

問題

「nを2より大きい自然数とするとき \(x^n+y^n=z^n\) を満たす整数解 x, y, z (xyz ≠ 0) は存在しない」というのはフェルマーの最終定理として有名である。

しかし多くの数学者の努力にもかかわらず一般に証明されていなかった。ところが1995年この定理がワイルズの100ページを越える大論文と、テイラーとの共著論文により与えられた。当然 \(x^3+y^3=z^3\) を満たす整数解 x, y, z (xyz ≠ 0) は存在しない。

さて、ここではフェルマーの定理を知らないものとして、次を証明せよ。

x, y, z を0でない整数とし、もしも等式 \(x^3+y^3=z^3\) が成立しているならば、 x, y, z のうち少なくとも1つは3の倍数である。

(1998・信州大)

「フェルマーの最終定理として有名である」

「ここではフェルマーの定理を知らないものとして」

「もしも等式 \(x^3+y^3=z^3\) が成立しているならば」

というような言い回しは、あまり数学の試験では見ることはありません。

この問題文の癖の強さに、並々ならぬ大学(問題作成者)の思いを感じますね。

「伝説の入試問題」と言われる理由でしょう。

解説

背理法を使って証明していきます。

背理法とは

背理法とは

「命題Aが成り立たない」と仮定して矛盾が導くことで、「命題Aが成り立つこと」と証明する方法

以下のような流れで、証明します。

背理法の証明の流れ
  1. 「命題A」を証明したい
  2. 「命題Aが成り立たない」と仮定する
  3. 仮定や条件を計算(同値変形)していき、矛盾を導く
  4. 「矛盾が生じるのは仮定が間違っているから」といえる
  5. 「命題A」が証明される

証明するのは、

x, y, z を0でない整数とし、もしも等式 \(x^3+y^3=z^3\) が成立しているならば、 x, y, z のうち少なくとも1つは3の倍数である。

の部分です。

「少なくとも1つは3の倍数である」ことを示すので、

「全て3の倍数でない」と仮定することから始めます。

解答

解答

「x,y,z が3の倍数でない」と仮定する。

xは3の倍数でないので

$$x\equiv\pm1\rightarrow x^3\equiv\pm1\pmod9$$

$$x\equiv\pm2\rightarrow x^3\equiv\pm8\equiv\mp1\pmod9$$

$$x\equiv\pm4\rightarrow x^3\equiv\pm64\equiv\pm1\pmod9$$

同様に

$$y\equiv\pm1\rightarrow y^3\equiv\pm1\pmod9$$

$$y\equiv\pm2\rightarrow y^3\equiv\pm8\equiv\mp1\pmod9$$

$$y\equiv\pm4\rightarrow y^3\equiv\pm64\equiv\pm1\pmod9$$

同様に

$$z\equiv\pm1\rightarrow z^3\equiv\pm1\pmod9$$

$$z\equiv\pm2\rightarrow z^3\equiv\pm8\equiv\mp1\pmod9$$

$$z\equiv\pm4\rightarrow z^3\equiv\pm64\equiv\pm1\pmod9$$

ここで

$$(左辺)=x^3+y^3\equiv0,2,-2\pmod9$$

$$(右辺)=z^3\equiv1,-1\pmod9$$

となり、矛盾が生じる。

したがって「x,y,zのうち、少なくとも1つは3の倍数」である

補足

「3の倍数であること」を示すので、「9で割ったときのあまり」で分類して証明した。

この時、合同式(mod)を利用することで計算を簡潔にすることができる。

合同式(mod)に関しては以下の記事を参考にしてください。

「n=2のとき(三平方の定理)の似たような証明」

今回は、フェルマーの最終定理の「n=3」のときについてでした。

「n=2」のときの似たような問題を過去に解説しています。

ぜひ練習に利用してください。

フェルマーの最終定理とは

フェルマーの最終定理とは

3 以上の自然数nについて、\(x^n+y^n=z^n\) となる自然数の組 ( x, y, z ) は存在しない

という、フェルマーが予想したものです。

様々な逸話のある定理であります。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。

準備中

フェルマーの小定理に関しては以下の記事を参考にしてください。

まとめ:フェルマーの最終定理(1998・信州大学)

今回の記事まとめは以下の通りです。

・信州大学のフェルマーの最終定理を題材とした伝説の入試問題

・背理法を利用して証明

・「9で割ったときのあまり」に着目する

・合同式(mod)を使うことで記述を簡略化している

伝説の入試問題シリーズ「信州大学フェルマーの最終定理」は以上です。

少しでも勉強の参考になれば幸いです。それではまた。

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